ルアノ地区モバイルクリニックに同行して(三重大学医学生-1)

三重大学6年 山田達彦
 山元先生、活動に携わってくださったスタッフの方々、ザンビアで貴重な体験をさせていただき本当にありがとうございました。ルサカ市でのヘルスセンター見学、ルアノ地区におけるモバイルクリニックの同行は日本の生活では決して経験しえないことのオンパレードで、これから医療に従事する者として考えさせられることが多々ありました。
 特に印象深かったのは、ルアノ地区でのモバイルクリニックにて「昨日から頭が痛い」と訴えた患者です。私自身、問診、診察をし、診断したわけではないために詳しいことはわかりませんが、その時どうしても頭の中で、本当は病気ではないのではないか、ただ受診したいがために症状を訴えているのではないか、と考えてしまいました。というものモバイルクリニックでは、その地区は半分お祭り状態であり、受診に関わる費用もカルテ代5クワチャです。また患者ら自身の医学的知識レベルも高くはなく、「とりあえず受診」ということが起こりうると考えたためです。時間、医師数、薬剤数など、物理的な医療資源が非常に限定的な場面では重症患者を優先的に診ることが望ましいですので、一見健康的に良好そうな若い女性が昨日から頭痛がすると言い受診した際には、内心、疑いといらだちを感じ、同時に無力感や半分諦めに近い感情を抱いていたのも事実であります。
(→山田さんがレポートの中で頭痛の患者さんのことを書いておられますが、確かにこんな健康な人がなんでここに来るのと考えることもあります。しかし、5年間の経験で、頭痛や単なるかぜ症状の中に、マラリア陽性者が数多くいることを見てきました。私たちの中では、頭痛はまずマラリアを除外してからと考えています。山元香代子)
 日本では医師が患者の主訴そのものに対して疑いを持つということは基本的にはなく、医療費も保険といえども1〜3割負担であり、今やネットで「頭痛」と検索すれば数秒で、様々な疾患からその処置までわかるという状況です。これはルワノとは正反対に近い環境であるために、以上のようなことが起こるのは仕方ないかもしれないと今は考えています。それだけに先生のおっしゃった「タダは良くない」という言葉の重みを理解することができました。
日本人の多くはおそらく、途上国での医療や教育に関する問題は、予算がないため、貧しいためであると考えがちかと思います。それはその通りであって、まずは予算があることが最重要であるとは思います。しかしながらその上で、コミュニティに支援という形で干渉することの難しさをひしひしと感じました。
ドライバーの方は長時間の運転に加え、現地での活動と大変な苦労をされていると思います。それを全く善意で行っているのは並大抵のことではなく、心からの尊敬に値します。
 最後に、繰り返しにはなりますが、山元先生、ドライバーの方を含むスタッフの方々、お忙しい中、見学させていただき本当にありがとうございました。

三重大学 6年 青山慎平

 海外支援に携わっていらっしゃる方の診療の実際の場面に立ち会わせていただくというのは今回実習をザンビアという地区にした一つの動機だったので非常にありがたく、貴重な経験となりました。

 今回のルワノという地区の移動診療、マラリアなどに関してのバンドによる啓蒙活動に同行させていただいて印象深かったのは、住民の意識の違いが大きく、非常に多様な住民がいるということでした。今回の診療に際して治療費や診察に対してお金は全くとっていないにもかかわらず、蚊帳が無料でないことに関して文句を言う人もいれば、町を医療の届かないところから2週間に1度とはいえ届くところにしてくれ、町に発展をもたらしてくれた人と感謝している人もいた。受けている教育の水準や身なり、栄養状態などもバラバラで、英語が話せない人もいるような多様で大きな集団に対して一定の医療を非常に少数で提供していらっしゃる先生方の姿勢には感銘を受け、日本の医師と患者の関係性がいかに重要であるかということを改めて認識しました。また先進国に生まれた幸運に関して非常に感謝しました。
 しかし200人ほどの患者が一日で医療を求め訪れており、その中に重症から軽症までいて自分が見逃せば2週間後まで医療が受けられず、最悪の場合死ぬこともあるという状況で先生方が朝から6時過ぎまで休憩もなく診察をされている現場は想像以上に過酷で、いかに難しいことかということを実感しました。また物やお金だけばらまいたら解決するようなものではなく、管理が丁寧に行われないと何の役にもたたないということが感じられました。ルサカ市内にはソーシャルワーカーや保健師のような役割をこなす人がヘルスセンターの中にいましたが、そのような管理を行う者は、ルワノ地区には存在する雰囲気はなく、問題を抱えながら最低限の医療を保証していくという形にならざるを得ないということも問題の一つとして感じられました。
 自分は実際に海外で医療をするということは現在は考えていませんが、このような状況で苦しんでいる患者、苦労しながら診察なさっている医療従事者がいるということを知れたことは、非常に貴重な経験であり、将来的に医師として医療に携わるときに、わずかでも自分にできることをやっていきたいと思います。

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