巡回診療に同行して(藤田保健衛生大学医学部)

藤田保健衛生大学6年 丹羽若菜

 今回、ザンビアでの交換留学中に山元先生の辺地医療を見学させて頂きました。山道をランドクルーザーで走り向かうとは聞いていたものの、実際行くとその道はとても過酷な道のりでした。首都ルサカのアスファルト舗装の道路は街を離れるや赤土の凸凹道に変わり、更に進むとここを車が走るのかと疑問を抱かずにはいられないような岩道が待っていました。途中、川が道路を横切っていたり、階段の上り下りのようなUpDownでようやくルアノ地区に到着しました。HealthCareCenterまで2~30kmあるこの地区で、おそらく多少の体調不良では受診しに行かないであろうし、かといって病状が進行した時には誰がどのようにHealthCareCenterまで行くのだろうと思いました。
 土壁で出来た小さな建屋に、百人以上の人が列をなして診療を待っていました。まずはカルテ探しのお手伝いをさせて頂いたのですが、カルテと言ってもB5の薄いノートで、質は勿論日本のものと異なります。4,000人以上のカルテがプラスチックコンテナに所狭しと詰められていて、番号順に並んでいないものもあるため、探すだけでも一苦労でした。日本だったら100円均一ショップで購入出来るもので、もっと分かりやすくソート出来るのにと、限りある資源の中で工夫していく必要があると感じました。続いて、先生の診療見学をさせて頂きました。受診待ちの患者が診察室である建屋に群がり、決して静かに待っているとは言えない状況の中で、200人近い患者の一人一人が抱えるProblemを聞き、聴診器をあて、丁寧に診察されていました。患者の受付は14時で閉めたものの、その数はとても多く、結局日没を過ぎる形に。建屋の中は真っ暗なため、建屋の外に移動し、月明かりの中で診察する光景はとても印象強く、ここまで患者のために出来る医者が何人いるのだろうと思ったほどです。膨大な人数の患者を丁寧に丁寧に診ていく姿は畏れ多く、とても私には出来ることではないと感じました。しかし一方、どんなに先生が丁寧に診断していざ治療にと思っても、処方したい薬がもう底尽きていた等、もどかしさを感じる場面もありました。また家族全員が受診していたりと定期健康診断のように受診しに来ている患者もいるように見受けられ、確かに、患者は安心を得れるかもしれないけれど、どれだけ医者に負担がかかっているか想像したりしないのかなと気になりました。蚊帳を有償で渡しているのも、無償だと漁に使ってしまうからという理由と知り、辺地の人は、限りある資源をある意味で工夫し使っているのかもしれないが、もっと今後に活かせる工夫をすべきではないかと思いました。ルサカに戻ったのは日付が変わる頃で、翌日以降レポート作成も必要であり、資金面でも時間の面でも、診療に行ける地域、回数、診察できる患者数、使用できる薬剤量に限界があると感じました。
 翌週はルサカ市内の病院を見学させて頂きました。地域の病院と、アメリカ資本の私立病院の2か所です。地域の病院では、DV対策のWardも有り、また家族計画のZoneでは女性用の避妊具が数多く用意されていたことが印象的です。ザンビアにおける女性の立ち位置が気になりました。検査も治療も、ここもギリギリのところで行っていると感じました。一方私立病院は、日本でもここまできれいなところがあるのだろうかと思うほどきれいでカラフルで、欧米の医師が出迎えてくれました。18歳以上の患者に治療費を請求し、子供の治療は無償で行っているそうです。午前中は患者が多く来院するそうですが、UniversityTeachingHospitalやHealthCareCenterのような喧騒とした感じがあるのだろうかと思うほど、患者が静かに治療に専念できる環境がありました。院内には地域医療を行う立派できれいなトラックがあり、地域で耳鼻咽喉科などの診療を行っているそうです。しかし、このトラックではあのルアノのような地域に行けるとは思えません。辺地でそれなりの医療を受けられる地域はどの位の割合なのだろうと思いました。
最も印象的なのは、臀部に熱傷を負った子供の治療で、PETボトルの水を何本か渡す際、先生が何度も何度も“JustWashing.Not Drinking”と念押ししていたことです。咄嗟に、前々日に先生が見せてくださった、辺地の人が川の脇を手で掘って、泥水の上澄みを飲用している映像を思い出しました。まだまだ支援で作られた井戸も少ない中で、有償で蚊帳を渡さないと蚊帳は漁に使われてしまうようなところで、この水はどう使われるのかなと疑ってしまいました。また地域に出向いて、マラリア予防の啓蒙活動を見学させて頂いた際は、蚊帳の必要性、マラリアを疑うべき症状、治療は祈祷ではなく薬によってこそ効果があることをより多くの村の人に伝わるように、話だけでなく、音楽や劇を取り入れていました。多くの村人が大きな木の木陰に座り、長時間にわたり話を聞いており、このようなザンビア人によるザンビア人のための教育活動が必要だと感じました。活動終了後、何人もの村人が「薬をくれてありがとう。本当に助かっている。でも足りないからもっと欲しい、送ってくれ。」と話しかけてきました。ザンビア政府の対策も決して十分ではないため、医療資源は勿論足りないと思います。しかし、村人の多くが手にしていた最新のスマートホンはどのようにして手に入れたのだろう、そのお金で他の環境整備とか出来ないのだろうかと疑問が残りました。
 患者1000人に対する医師数が0.066人のザンビアでは、山元先生の医療活動は本当に貴重だと思われます。とてもまねできることではありませんが、少しながらでも何らかの形で支援させて頂きたいと思いました。また意思を強く持って、ひたむきに患者の治療を行うところは是非とも見習いたいと感じ、今後の勉強、医師になってからの活動に活かしたいと思いました。
 この度はお忙しい中、貴重な経験を何度もさせて頂き、本当にありがとうございました。

藤田保健衛生大学 医学部6年 須藤湧太

◎ルアノの巡回診療
 ルアノ地区は、首都ルサカから車で山道を片道6時間かかり、水や電気もなく、永遠と森が続くなかにポツポツと小さな家や村があるようなところでした。山元先生が活動している診療所は、その森のなかにあり、2つの小さな小屋に診療室、妊婦健診室、受付・薬剤配布室がありました。到着して初めての仕事は、患者の紙カルテを探すことでした。カルテは、4,000を超え、コンテナボックスの中に番号順に保管されていましたが、紛失してしまったものもあり、また、蒸し暑い中での作業はとても大変なものでした。次に、患者さんの血液を少量採取して、マラリア迅速診断キットにて感染の有無を確認する作業を手伝わせていだだきました。次々と患者さんが来るため休むまもなく作業していましたが、マラリアの陽性率がとても高く本当に驚きました。日本でのマラリアの3大所見は、発熱、貧血、肝脾腫ですが、ここではそもそも栄養状態が悪く、所見からマラリアを推測するのが困難でした。ここでは、咳がでただけでマラリアを疑うとのことでした。最後には、山元先生の診察を真っ暗になってライトで先生の手元を明るくしながら、見学させていただきました。
◎私立病院と郡病院の見学
 郡病院を見学した後に私立病院を見学しました。見学した郡病院は、ルサカからそれほど離れていないところにあり、多くの患者さんが列をなしていました。医療機器やスタッフは十分とはいえず、まだまだ必要な医療サービスを患者さんが受けることができていないと感じました。一方、私立病院は、アメリカからの寄付と裕福な大人の患者さんからの医療費で、重症な子供に対する医療費を無料で提供しているところでした。2つの病院をみることで、この国の医療事情や支援のあり方について考えることができました。
◎ルカタ地区の啓発活動
 マラリアや下痢の予防について、寸劇をとおしてわかりやすく説明している様子を見学しました。多くの人々が集まり、劇も盛り上がり、見ていてとても楽しかったです。
◎まとめ
 今回の活動のなかで最も印象に残っているのは、山元先生の“支援することの難しさ”のお話です。私は、ザンビア人の医師はなぜ山元先生の活動を手伝わないのか、ザンビアの政府機関はなぜ活動資金をださないのか、という疑問をもっていました。そこには、人々の考え方や経済環境など深い理由があり、ザンビア滞在期間に、先生のお話や自身の体験から、発展途上国での医療支援のあり方の難しさを体感することができました。山元先生、貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。

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