巡回診療に同行しました
先生、先日はルアノの診療に連れて行っていただいて、ほんとうにありがとうございました。以前から先生のお話を聞きながら、“きっと、とてもたいへんなところなのだろうなぁ”と思っていましたし、写真を見せていただいていたので覚悟はできているつもりでした。でも、実際に連れて行っていただいた今、まずお伝えしたいのは、あの場所に診療のために通い続けていられる先生に対する深い敬意の気持ちです。ルアノに通い続けることがどれほどたいへんなことか、忍耐の、自己犠牲の伴うことか、たった一度連れて行っていただいただけですが、先生の苦労のその一部が少しだけ体験できたのではないかと思います。そして、ほんとうにすばらしい活動をされていることに改めて感動しました。
ルサカを出発して、グレートノースロードを北上して快適なドライブを楽しんでいた私ですが、実は最初にびっくりしたのは、グレートノースロードを左に折れて、ムレタさん(準医師)を迎えに行った時でした。もちろん舗装なんてされていない石ころと穴ぼこだらけの細いあの道を揺られながら、先生も運転手のスルさんも平然としておられるので、“あ、ここで驚いてはいけないのだな”と、今日この先のドライブをちょっと覚悟した私でした。でも、ムレタさんと共にまたグレートノースロードに戻ってチサンバへ、そしてチペンビヘルスセンターへ向かう道は本当に快適でした。よく整備された広い農場の景色、そして広くてきれいな池の周りに牛が集まっている様子などは、ルサカでは見られないほっとする景色でした。
チペンビヘルスセンターで他のスタッフと合流するのを待っていた時目についたのは、壁に貼られた女性の権利を守るために用意されたポスターや手書きの標語のようなものでした。帰り道で運転手のスルさんも、農村の女性は厳しい生活をしているので、老けるのが早いとおっしゃっていましたが、同じ女性として生まれた国が違うだけで、あるいは同じザンビアでも街に生まれた女性と村に生まれた女性の境遇がそれほど違うことを知り、この不公平な現状が早く変化してほしいと改めて強く思いました。
そして、チペンビを出発して、しばらく走ってから、ルアノへ向かう道を左に入って行ったあの先の体験は、ことばではうまく表せないものでした。最初は低い木にはさまれた砂地の道を、そしてだんだん石が、そして岩がごろごろしている道にかわっていって、車が急降下していくように思えた時、気分はまさにジェットコースターでした。もちろん、ゆっくりと丁寧に運転して下さるので、安心して乗っていましたが。それでも、どう考えても車が通れる道ではない、その様子を見ながら、“この先どうなるのだろう?”と考えていました。何か所も難所を越えていきながら、これはとても体力のいる仕事だなとも思いました。“今日は緑がきれい”と先生はおっしゃいましたが、私はとても景色を楽しむ余裕がありませんでした。はじめて少しほっとしたのは、あの大きなバオバブの木の所へ来た時です。その先ルアノの診療所まではもうすぐでしたね。
もうすでにたくさんの人が集まっていて、受付の順番を待つ人の列が、列というより群衆が、受付の小さなテーブルに押し寄せて来るように見えました。もちろん受付をすませた患者さん達が全て先生とムレタさんの診察を受けるために、隣の建物へと移っていくわけで、”これはたいへんだな”とここでもまた思いました。あの日はとてもとても暑くて、全ての受付が終わった後、私は車で休ませていただいていました。朝ルサカを出発してルアノに着くまで4時間以上、そして、それから全ての患者さんの診療が終わるまで5時間ほど、ほんとうにお疲れさまでした。きっとすごくお疲れのはずなのに、15時半すぎの遅い昼食をとっておられる時、先生は笑いながらスタッフと話しておられました。また、“すごいなぁ”と思いました。
ところで、あの日の昼食でいただいたインパラ(野生のシカ)の干し肉は初めての経験でした。はじめはこわごわでしたが、塩の良く効いたベーコンのような味で、とてもおいしかったです。ごとそうさまでした。
受付のお手伝いをしていた時、そして診察を受けた後、薬をもらうために戻ってくる患者さんを見ていた時、当然ですが具合が悪くてしんどそうにしている子供たちをたくさん見ました。立っているのがしんどくて、座り込んで薬の順番を待っている女の子を見た時、先生がここに診療に来られなかったら、彼女どうなったんだろう----と考えてしまいました。そして、あの悪路を、悪路というよりは、もはや道とは思えないところを、それでも通い続けておられる先生のされていることは、ほんとうにすばらしいと、また思いました。
帰り道、カナカンタパの診療所の先で見た緑の草原に花が咲いている景色はとても美しかったです。広くて美しい景色のあるこの国に住んでいる人々がみんな、そして世界中に住んでいる人々がみんな、公平に生活を楽しめるようになったら、ほんとうにすばらしいですね。
長くなってしまいました。あの日はご一緒させていただいて、ほんとうにありがとうご
ざいました。今年はなかなか雨季が始まらず、暑い毎日が続いていますが、どうぞご無理をされませんように。温かいあいさつの気持ちと深い敬意をこめて。
A.K