巡回診療に同行して

 私は3月29日から4月9日までの約2週間、アフリカ南部に位置するザンビアへボランティアとして参加させていただきました。
叔母(山元先生)が、海外で医師として医療援助をしている活動は以前から話を聞いて、メディア等も通して情報を得ており、現在の大学生という期間に貴重な経験を積みたいと思い、話をいただいて参加することになりました。
ザンビアの首都ルサカに到着し、その街並みや設備は意外にも自分のしていた想像よりも良好でした。そして診療前日に、沢山の薬や現場で使う椅子や机などを車に詰め込み、翌日水曜日の朝6時に出発しました。
 今回、診療を行ったのはチサンバ郡のサンダラという地域でした。車にはサポートしてくれる看護師さんやスタッフさんを乗せ2台で向かいました。サンダラへの道のりはとても険しく、首都のルサカを離れるにつれて道の状況は徐々に不安定になり、始めは道路が凸凹だったのが、次は点々と陥没が目立つ道路になり、最終的には野原に轍だけがあり牛が目の前を横切っていくような道のりでした。また、その中でルサカを離れるにつれ家屋の風景なども変化していき、柱と藁で作った屋根だけのような建物が目立ち、生活の雰囲気からも国内での発展の違いから、貧富の差を感じさせられました。
 車が砂を巻き上げ、ジェットコースターのように揺らしながら向かう中、途中途中で“待ってくれ”と手を挙げて待っている人達がいました。車を停めると、どうやら診察を希望しているらしく、叔母とスタッフ方たちが診て薬などを処方しました。彼らは、毎週水曜にその道を通ることを分かっていて診察を受けるために待っているのだそうで、この活動がどれだけ求められているのかという事を痛感しました。
 その後、出発から5時間以上経ち、お昼過ぎに目的地のサンダラに到着しました。そこにはテニスコート4つ分くらい大きさの広場に簡易的な小さな小屋と、藁で出来た屋根と柱の簡易的な建物があり、そこに椅子や机を運び診察が始まりました。
 すでに広場には小さい子供を抱えた女性を中心に多くの人々が集まっており、次々とノートで作られたカルテを取りに受付に集まってきました。カルテには番号が記入されており、患者さんが渡してくる番号札を500以上あるノートから探して渡す作業を手伝いました。
 カルテを受け取った後、村の人々は叔母が診察行う小屋や、マラリアの検査を行う場所、体重を測る場所などに各々で行って診察を受けていました。診察を受けた後は、病状によって小屋の隣に設けている施設でスタッフに薬を処方してもらっていました。
 診察の様子を見せていただくと、小屋の狭い空間の中に沢山の患者さんが列をなしており、診察を待っていました。そして、サンダラではザンビアの公用語である英語は通じない為、叔母の隣に現地の言葉を話せるスタッフが座り、村の人々との通訳をしていました。
 広場の周りには、小さなマーケットも出ており、バナナや、遠く離れた街まで行って仕入れたとみられるお菓子や日常品が並んでいました。村の人々の様子は、子供たちは元気に走り回り、大人たちも同じように皆と会話を楽しみ、とても明るい空間でした。
 五時間程度経過し、並ぶ患者さんも少なくなりその日の活動は終了しました。すると、村の人々から“シマ”と呼ばれるザンビアの料理をご馳走してもらい、スタッフの皆さんといただきました。
 その後、話を聴くと、その日の患者さんの中には、現場の対応だけでは難しく街の大きな病院へ行かなくてはならない方もいたと聞きました。しかし、一番の問題であるマラリアに罹る人は、この活動をしているここ数年は徐々に減少しているらしく、その日もマラリア検査で陽性だった人は全体の十数パーセントでした。
 他にもこの活動では、井戸を掘る支援なども行っていると聞き、現地の人々の生活を大きく良い方向に向かわせているのだと感じました。
 今回の活動で、実際にアフリカという地に足を踏み入れ、現地の様子を生で見てみて感じたのは、“幸せの価値観”でした。今の私たちが暮らす先進国日本では全てのものが揃い、万人が最低限の生活を保障されています。しかし、私たちはそのような中でも生きていく中で、発展ゆえの足枷からストレスを感じ、幸せを感じる瞬間はそう多く無いのかもしれません。しかし、今回行ったザンビア、特にサンダラでは、決して便利な生活でなくても、村の人々が皆、笑顔で和気あいあいと生活し、夜になり、空を見上げれば見たことのないような綺麗な星空が広がっていました。大袈裟に言えばそもそも幸せや不幸せという考え方自体がそこにないのではないかと感じるくらいでした。そこから、私たちが住む日本でも置き換えて幸せが何なのかといことを考えなければならないと感じました。そして、そういった素晴らしい本来の人間らしい生活が残る地を、こういった活動でより良いものにしていくことに大きな意味を感じ、素晴らしいものなのだと改めて痛感しました。
 最後に、微力ではありますが、この活動に参加させて頂いて、この文章に書ききれない多くの勉強をさせて頂きました。今回の活動で得た沢山の大きな経験を自分のこれからの生き方に生かし、遠く離れた地にある現実を、たくさんの人に伝えていきたいと思います。
                                        福岡大学 山元康寛
サンダラ

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