山元先生は巡回診療に行かない日も忙しい(櫻井睦子さんからの報告)

<一人で全てをやらなければならない大忙しの山元先生>

毎週水曜日の診療後には、全てのカルテをチェックし、クリニカルオフィサーの診断や処方について問題点を指摘し指導をする(小さなノートをカルテとして使っているが、埃だらけの上にノートがすぐバラバラになる。それをテープで補修するのも先生の仕事)。また先生の診療日以外のコミュニティーヘルスワーカーの活動レポートにも目を通す。
それらを集計して、ヘルスセンターへ提出するのと巡回診療に参加するクリニカルオフィサー、助産師、コミュニティーヘルスワーカーへ配布するのと、診療レポートを二種類作成する。
そしてもちろん次週の診療に備えての用意も必要だ。

診療だけでなく、マラリア蚊駆除の薬剤噴霧も雨季前のこの時期にやらなくてはならない。その用意は薬剤・噴霧器、マスクや手袋などの装備から、宿泊施設の無い所で4~5日噴霧を行う為、派遣する人間の寝るためのマットレスや毛布、食料、ジェリ缶に入れた予備の燃料、具合の悪い村人が来た時の為の応急処置薬品セット等々まで。用意も大変だ。山元先生は辺地に何日も泊まって噴霧をしてくれるスタッフを気遣って、彼らの食料の用意なども疎かにすることなく、自分で調達に行っている。
さらには、井戸掘りも並行して進んでいる時がある。井戸掘り業者は今のところ誠実に仕事をしてくれているが、できる範囲で確認をすることが大切だ。現場にその都度行くのは無理なので、業者と連絡を取り進捗状況を把握する。

診療も噴霧も、帰ってくると車両の整備修理に気を配らなくてはならない。
車のメンテナンスは、運転手やメカニックに任せる他ないが、時々目を光らせないと、スペアパーツや燃料をごまかされたりする可能性もあるので、任せっきりというわけにはいかない。

買い物も時間がかかるし日本人にはイライラする場面も多い。
街中は渋滞が酷く駐車場を見つけるのも一苦労。店に行けばやる気の無い店員が同僚とおしゃべりに興じながらのんびりとお金を受け取り何度もお金を数えなおす。レシートを書いてもらうのにもやたら時間がかかり、その上間違っていたりする。
役所での手続きや銀行も同様で、職員の超スローな仕事に加え、停電だのコンピューターがダウンしただのと、まあとにかく言い訳のオンパレード。書類一枚もらうのに何時間も待つことがある。最近は役所等の手続きも一部オンライン化されつつあるが、システムの不備や停電でシステムが作動していない場合も多いので、決してスムーズに終わることはなく、便利になったとは言い難い。

ついでに言えば、保健省や地方の保健局の役人に面会の約束を取り付けても、すっぽかされることが多く、時間も車の燃料代も無駄になって本当に腹立たしいことこの上ない!
約束をすっぽかしておいて謝るわけでもない保健省の役人に、怒りを押し殺して必死に頭を下げ、噴霧薬剤をもらえるように交渉する山元先生の姿に胸が熱くなる。

というわけで、何事もやたらに時間がかかり、人任せにはできず、自分の目で確認しプッシュしないと正しく事が進まないのがザンビアでの現実である。

留守中も滞在中もお手伝いして下さる日本人の方々がいるのだが、山元先生は年に2回、各3か月弱のザンビア滞在中に、診療・噴霧・井戸掘り・コミュニティーヘルスワーカーのワークショップの手配と準備、車の管理、運転手やメイドの給料計算、金銭管理、役所での様々な手続きや折衝を全てほぼ一人でやっている状態で、これはどう考えても無理がある。実際深夜まで机に向かっている日も多い。
正直なところ、2011年から今まで大きな事故も無く、よくこの状態で続けてこられたものだと思う。様々な手続き等がどんどん煩雑になってきているし、活動の範囲も広がっている。今後もこの体制で続けていくのは現実的ではないだろう。

山元先生の負担を減らすべく、ザンビアに長期滞在して総務関係の仕事を一手に引き受けてくれるような人材が現れてほしいものだと切に願う。

<雑感>
半年ぶりにザンビアに到着した日、ORMZの事務所兼住居は断水だった。
その夜、バケツの水で行水して、日本での楽ちんな生活で緩んでいた身も心も一気に引き締る。
それから毎日夕方4時位から朝6時過ぎまで断水が続いている。午前中しか水が出ない日もあり、とにかく水が出ている間にバケツ、洗面器、鍋、ミネラルウォーターの空きボトル等々に水を貯めて、洗濯と料理を済ますしかない。が、
数週間もするとすっかり水道局に調教されてしまい、本来水道は24時間止まらないのが普通だということを忘れ、毎日何時間か出ているだけでもありがたいと水道局に感謝さえするようになり、“水時計”に支配される生活に甘んじる。

10月のザンビアは11月下旬から始まる雨季前のとても乾いた季節。舗装していない道路は車が通るたびに埃を舞い上げる。そんな一年で一番乾燥している時期に、ジャカランダや鳳凰木の花が一斉に咲き誇り、埃だらけの街を華麗に彩っている。
マンゴーもそろそろ食べ頃だ。小粒で黄色い繊維ばかりのものから、外皮は緑色だが中はオレンジ色に熟れて美味しい種類、また輸入物ではあるがアップルマンゴーと呼ばれる丸々として大きく赤っぽい色の混じるちょっと高級なマンゴーもある。マンゴーの樹はザンビアの至る所にあってたわわに実を付けているので、日本では考えられない安価で手に入る。ザンビアにいる間にせいぜいマンゴーを食いだめしておこう。

久しぶりに日本からザンビアを訪れると、イライラして腹立たしいことも多いし停電や断水にもうんざりするのだが、青い空、緑の大樹の原色の花々、地平線まで続く大地、そして人々の笑顔に魅了され、性懲りも無くまた次の訪問を楽しみにしてしまうのである。               櫻井睦子  

ジャカランダ2 2018

マンゴー売り (2)

鳳凰木の下のブリキ屋