JICA基金事業の報告
活動の背景:
ルアノ地区では、これまでの巡回診療活動、蚊帳の配布、コミュニティヘルスワーカーの努力により、マラリアによる死亡者数が激減した。しかし、マラリア患者数は非常に多く、中には数か月の間に数回り患する子供もいる。またマラリア検査キット・抗マラリア薬は高価である。
そのため保健省が薦め、ルサカ市で効果を上げている噴霧後最低4か月は効果が継続する屋内のマラリア蚊殺虫剤噴霧を実施したいと考えた。
事業実施に先立ち2016年、地区住民の協力を得て、マラリア患者のなかなか減らないルアノ地区で試験的に実施し、全村で実施可能と考えた。
実施した内容
2016年分
2017年4月に予定しているマラリア蚊殺虫剤噴霧に向けて準備を行った。
事前に、チサンバ郡保健局に活動実施承認のための協議を行うとともに、ルアノ地区村長と話
し合い、殺虫剤噴霧の目的を説明し理解と協力を求めた。
その結果、モデル的な実施について理解が得られたことから、契約締結前であったが、天候の関係から2016年11月、ルアノ地区等229世帯、合計406戸に当法人事業としてマラリア蚊殺虫剤噴霧を実施した。
12月の契約締結以降、定例の巡回診療やコミュニティヘルスワーカーの活動を通して、マラリア患者の発生動向について注意深く観察を行ってきたが、2月末の時点では、マラリア患者数は少ない状況であった。
また事前に実施したマラリア蚊殺虫剤モデル噴霧において、噴霧計画の情報が不十分のため準備の済んでいない世帯があったり、噴霧後、家に入れない時間に関して間違った情報が流れていて、混乱を招いた点があった。これらの点について反省し、2017年実施の際には更なる準備と周知徹底を行うこととした。
なお郡保健局に対しては、2017年の噴霧に関する協力の確約を取り付けた。
2017年分
4月13日にチサンバ郡郡保健局に活動実施のための承認と、噴霧器4台を借りる許可を受けた。
その際、以前推奨された殺虫剤レスコルではなく、アクテリック300CSがより毒性が少なく6カ月間効果が期待できると説明を受けた。
そのため郡保健局から支給されるアクテリックを使用することとし、昨年購入したレスコルは郡保健局に提供することとなった。
なお、郡保健局からアクテリックの支給を受ける条件として、郡保健局が使用している記録用紙を用い、郡環境保健技術者が最終的に活動の監督をすることとなった。
4月17日、ルアノ地区の村長を含めたルアノ住民ボランティアとの話し合いを実施した。
2016年の噴霧に関して間違った情報が流れたことを踏まえ、今回は屋内の殺虫剤噴霧を実施する前に、屋内を空にし、噴霧後2時間(殺虫剤が変更になり3時間から2時間に短縮)は屋内に入れないことを住民に周知徹底するための役割分担や日程を決めた。ルアノ以外での噴霧の計画や、20日間のコミュニティヘルスワーカーの研修日程との調整により、4月21日と4月27日から5月2日は泊まり込みで実施する計画となった。
4月21日 サンダラ・サパニ地区で噴霧を実施。チサンバから雇い入れた噴霧実施の研修を受けた噴霧実施者2人、昨年の噴霧の際彼らから指導を受けた2人の住民ボランティア、スーパーバイザー2人の計6人で2組のチームを作り、2台のランドクルーザーに分乗。サンダラ地区に着く前に1台のランクルの前輪が外れ、全く動けず、1台でサパニ地区の35戸の噴霧を済ませルサカに戻った。動けなくなったランクルには3人を残し、野宿となった。22日にもう1人の運転手が壊れたスリーブハウジングの替えをルサカでみつけルアノに向かい、何とか修理できたが、帰り道もう1台のリーフスプリングのUボルトがはずれ、またしても修理。徹夜で徐行しながらルサカに到着したのは23日の昼過ぎだった。
車の修理を万全にして、4月27日から5月2日まで5泊6日で噴霧を実施。車両も大きな問題はなく、217軒 376戸の噴霧を実施できた。
マインガ地区のみ連絡が届いておらず、噴霧が実施できなかったため、5月15日にマインガや道路状況が悪く行くことのできなかったサンダラの数軒を含め、再度実施の予定とした。
5月15日に再度噴霧を実施。16家族30戸の噴霧を行った。車で相当の距離走ったが、ルアノの端と端で、あまり効率の良い噴霧活動ではなかった。
ルアノ全村と境界の村の264世帯、合計433戸に噴霧を実施した。噴霧できなかった34戸は鍵がかかっていて不在が主な理由で、明らかに噴霧を拒否されたのは2世帯であった。アクテリック300CS は合計127本使用した。
郡保健局には噴霧終了毎に報告書を提出し、5月22日に最終報告をし、郡環境保健技術者に監督料を支払った。また、2017年の11月の噴霧への協力を再度お願いした。今後、マラリア患者数の動向を注意深くみていきたいと考えている。