現地活動報告 学生さん同行記
巡回診療に同行させていただいて(4月12日 ルアノ)
東海大学医学部6年 藤田耕己
始めに今回山元先生にお世話になるにあたって2年前からメールにてやりとりをさせていただき、今回巡回診療への参加を実現できたことに対し、山元先生始めドライバーや準医師、助産師、そしてルアノのボランティアの方に感謝申し上げたい。同行させていただくにあたって、巡回診療の現状を教えていただいたが、薬やお金の管理、車の修理、スタッフとの連携など大変お忙しい中、実習を受け入れていただき多くの学びを得たので共有したい。
巡回診療への参加を通じて、強く印象に残っていることは継続的に地域と関わることで築き上げられた総合力である。山元先生は、半年間は日本での診療もされているが、その間も準医師や助産師、ドライバーが共同して、現地のボランティアとともに、巡回診療を行い、成果を上げていることを伺った。現地の人々を雇用し、密に連携を取り合うことで活動を現地の手で行えるところまで発展させているところに、将来にまで続く活動の継続性を垣間見ることができた。先生と数日間時間を共有させていただいた中で、よくおっしゃっていた「私は大したことをやっていません。みんなが本当に頑張っている。」というお言葉から、ザンビアでの地道な活動と先生の熱意によって地域の方々の主体性引き出していることを感じる場面であり印象的であった。
森の中についている細く、険しい道は時に枝分かれしながら、奥まで続いていた。毎週のように車を修理しなければならないとの先生のお話から、想像をしていたが、岩が飛び出している道を走り川を渡っていくこの道を毎週通っている先生やスタッフの方々に感銘せずにはいられなかった。ドライバーは激しい揺れの中でもハンドルを切りながら穴に入らないよううまく運転し約5時間ほどでルアノに到着した。道すがら、村落に立ち寄る機会を得て、こちらの田舎に住む方々の住環境や食事などを拝見できたことも貴重な経験であった。到着すると、すでにボランティアがたくさん集まって準備を始めていて、患者さんも列をなしていた。この巡回診療に対するボランティアの思いと患者側の期待の大きさを感じる。実際に働いているボランティアの方々はとても生き生きと仕事をされているように見え、この仕事に関わっていることに誇りをもっているようであった。先生がこの土地をセンターにした当初は、ルアノから搬送されてくる患者は必ず重症で亡くなる、といわれるほど医療が行き届いていない地域であったという。そこから、先生が診療を始め少しずつ住民がその重要性に気づき、地域に浸透をしていったからこそ住民を巻き込んだ地に足がついた活動を展開できるのだと感じた。私はマラリアの簡易検査キットを用いた検査を担当させていただいた。患者のカルテへの結果記載とは別に、記録を作っており2割以上の方が陽性であった。全員の検査が2時くらいに終わってからも、山元先生や準医師の診察ブースにいくと長蛇の列ができていて、6時過ぎまで行われた。多くの患者がいる中でもしっかりと患者の話を聞き、聴診器を当て患者の状況を正確に把握し治療処方をしていく姿から、地域との信頼関係を築いていった基礎を見た気がした。私たちも通訳を介して問診や身体所見を取らせていただく機会を得た。200人近くの患者をみて疲れているはずの先生からは充実感からくる笑顔があり、輝いているようにみえ届かないところに届けるやりがいを先生から感じ取ることができた。
帰り道では車のブレーキが壊れたり、穴にはまってしまい動けなくなってたりと一時はどうなるかと思ったが、地域の方がかけつけてくれスコップや牽引などを用いてなんとか動かすことに成功し、日をまたいでルサカまで到着した。最後の最後まで地域の方々との強い結びつきを感じさせる出来事があり、今後私が国内外の健康が保証されていない地域に関わっていく上で原体験となると強く感じた。
先生のように臨床経験が豊富な医療従事者が地域に継続して関わっていくという安心と同時に、薬をはじめとした機材の準備、車の運転、情報の市民の周知やボランティアの教育などともに作り上げる総合力を一歩一歩築きあげているからこそできる巡回診療の総合力を見学させていただいたことに改めて感謝申しあげるとともに、今後の活動においても地域とともに歩んでいく姿勢と、困難に対しても強い思いを持って継続して関わっていきたいと肝に命じることができました。ありがとうございました。