マラリア蚊殺虫剤噴霧活動、巡回診療に同行させていただいて

マラリア蚊殺虫剤噴霧活動、巡回診療に同行させていただいて
宮崎県立宮崎病院 研修医  山口亜希

始めに、今回ORMZの活動に同行させていただき、山元先生はじめドライバーやクリニカルオフィサー、助産師、CHWの方々に感謝を申し上げます。
4月21日、サパニ地区でのマラリ蚊殺虫剤噴霧活動に参加させていただきました。朝3時頃にルサカを出発、街を離れると赤土の凸凹道に変わり、本当に車が走れるのかと疑問に思ってしまう程の岩道を走り、さらにはまだ水の流れる川をいくつか渡りました。片道6時間程度を走り、ようやく到着かと思ったところ、ランドクルーザー2台のうち1台がぬかるみにはまり、左前方のタイヤが外れてしまいました。直ぐの復旧は不可能で、数人は車の修理のために壊れた車に残り、残り1台に7人がぎゅうぎゅうに乗り込み、急遽できる範囲での蚊殺虫剤噴霧を行いました。家屋は草木が生い茂る場所にぽつぽつとそれぞれ離れた場所に点在し、家の中の物を外に出してもらった状態で、壁に殺虫剤を噴霧していくという地道な作業で、その日は約40戸行いました。昨年も噴霧を行なったにも関わらず、マラリア検査はその日は33人中22人(67%)が陽性でした。家屋というのは、土壁でできているのは良いほうで、藁でできている家も多く、ほとんど外と繋がっているので、蚊は容易に入って来る状態です。そのような家屋で果たして殺虫剤がどれほどの効果を期待できるのかははっきりとは分からず、その中で活動されることの困難さを感じ、また、1人でも多くの命を救うべくマラリア感染を未然に防ぐために活動される姿に感銘を受けました。
また、その日以降の殺虫剤噴霧活動として、4月27日、現地の方だけで殺虫剤噴霧活動を行うため、車に薬剤や噴霧のための道具、5日分の食料、車で寝泊まりするためのブランケット等を詰め込み出発しました。5日間で450件の噴霧を行う予定で、ルサカに到着するのは5日後の予定とのことでした。山元先生が日本での診療のため不在中でも、スタッフが共同して、巡回診療や殺虫剤噴霧を行っていると聞き、物品や金銭を与えるだけではなく最終的に現地の人たちで自立して活動できるように、共に協力しながら活動されている様子が伺えました。「彼らの協力のおかげ」と先生もおっしゃっていたように、支援がなくなったとしてもその国が自立できるために、現地の方々との継続的な連携の大切さを学びました。
ちなみに故障した車についてですが、もう1台の車で必要な部品を街で購入して車が故障した場所へ戻って直したところ、今度は無事だった車も不具合が起き、ルサカに車が到着したのは2日後の昼間だったとのことで、山元先生はもちろんのこと、スタッフの努力や大変さも半端じゃないなと思いました。
4月26日にはルアノ地区での巡回診療に同行させていただきました。前回同様、石と岩で出来た凸凹道を進み、途中、今日が診療と知っている方に、発熱している子供がいると車を呼び止められ、マラリア検査をし、陽性の患者には抗マラリア薬を渡しました。2件ほど呼び止められ、6時間後にようやくルアノに到着しました。多くの患者さんが待っておられ、クリニカルオフィサーや助産師、CHWの方々がルサカから運んできた医療器具や薬品、マラリア検査キットなどをてきぱきと準備されていました。
土壁で出来た2つの小さな小屋に受付、診療室、妊婦健診室、薬剤配布室がそれぞれあり、少し離れた大きな木の下に体重計をかけ、小児の健診をしていました。
受付には4000人以上のノートがカルテとしてコンテナに詰められており、受付でカルテを渡し、健診・妊婦健診・診察等に進んでもらいます。
その日は100人近くの患者が診察を受けにやってきました。前回は180人程度だったとのことで、それでも少なかったということでした。主訴を聞き、聴診器をあて、丁寧に診察されていました。もちろん、血液検査等の検査ができない中、見て聞いて触るといった診察の基本の重要さをひしひしと感じさせられました。
山元先生は2011年から診療活動をされ、約6年間もの間このような活動を継続されているということで、先生のご活動はこれまでも日本で耳にすることはよくありましたが、実際に拝見させていただくと、想像を超える苦労で、感無量でした。地域とともに歩んでいく姿勢と、困難に対しても強い思いを持っていらっしゃる姿は是非とも見習い、私も今後、日本の僻地で医療に携わる中で、参考にさせていただきたいと思いました。
くれぐれも体調を崩されることのないようご自愛ください。先生をはじめとしたORMZのスタッフの方々の活動が今後も継続され、ザンビアの地域の方々の健康が維持されますことを願っています。