ルアノ地区でのモバイルクリニック
2011年4月にザンビア保健省の許可をもらい、チボンボ郡保健局、リテタ病院(郡病院)などとの協議を重ね、2011年10月からザンビアの首都ルサカから北へ車で約2時間走ったチボンボ郡内にある、チペンビヘルスセンター管轄内のルアノ地区(ヘルスセンターからさらに2時間以上要する)でモバイルクリニックを月2回開始しています。
ルアノ地区への移動
ルアノ地区は、水、電気、トイレもなく、人々は小川の水を飲料に使用している所です。
首都ルサカからの舗装道路は、チペンビヘルスセンターの約1時間手前から砂利道となり、チペンビヘルスセンターからルアノ地区までの約35㎞は、途中から岩のごつごつした4輪駆動車でないと走れない山道となり、片道約2時間かかります。
雨季はさらに時間がかかり、泥道に埋まって動けなくなることもある悪路であり、ルアノ地区までたどり着けなくなることもあります。中古のパジェロは2回の往復で使えなくなり、11月に中古のランドクルーザーを購入しました。
このランドクルーザーの後部に折り畳みのイスやテーブル、医薬品、体重計・血圧計・体温計などの医療器材を詰めたコンティナー3箱、カルテ、水などを積み、私とリテタ病院からクリニカルオフィサー(準医師)と助産師、チペンビヘルスセンターから1名のスタッフが乗り込み、運転手ともども5名一緒にルアノ地区に向かいます。
診療
診療は、住民が建設したカヤぶきのコミュニティスクールを借りて行っています。1室を診察室、その隣の小部屋にわら敷きの寝台をこさえ、そこを妊婦健診室とし、別の1室で受付・薬剤の配布を行っています。(カヤぶき屋根には穴が開いていて、雨季には使えず、12月からは、手前にあるレンガ造りのコミュニティスクールを借りて活動を行っています)
おおむね当日の朝5時に首都ルサカを出発、10時から15時半、16時まで診療を行い、20時から21時頃にルサカに帰り着くと行った日程です。
なお、夜間の山道の通行は非常に危険なので、患者が多くても、診療を途中で打ち切らないといけないこともあります。
診察は私とクリニカルオフィサーで行い、助産師は妊婦健診・家族計画を実施し、チペンビヘルスセンターからのスタッフが薬剤配布を行っています。このスタッフはHIV/AIDSカウンセラーなので、合間にHIVの検査を実施しています。さらに運転手と現地ルアノ地区のコミュニティヘルスワーカー(CHW)が受付を行っています。
持ち込む医薬品は31種類の経口薬、15種類の注射薬で、汎用される薬剤は必要分、私が事前に分包しています。
現地の人々はほとんど英語が話せないので、CHWに通訳をお願いして、診療を行っています。
このCHWはマラリアの研修を受けているので、マラリアキットを使った熱帯熱マラリアの血液検査も同時行っています。
ルアノ地区の患者の状況
2011年10月から2012年2月末までに登録された患者数は878名で、毎回平均128名の患者の診療を実施してきました。妊婦健診、家族計画受診者はそれぞれ平均12名、10名。HIV検査はこれまで51名検査し、7名が陽性でした。マラリア、上気道炎、結膜炎、下痢などの患者が多いですが、雨季になってマラリアの患者が増加し、2月は130名中85名が陽性でした。
また、CHWにマラリアキット、抗マラリア薬、パラセタモール(アセトアミノフェン)、テトラサイクリン眼軟膏などを渡し、検査と薬剤投与を依頼するとともに次の診療までのフォローをしてもらっています(更なる治療が必要な患者は、チペンビヘルスセンターまで半日歩いてでかけるか、牛車か運が良ければ車に同乗してでかけることになります)。なおこの2月は、191名中153名がマラリア検査陽性でCHWにより抗マラリア薬が投与されました。
チボンボ郡自体は他の郡と比べて、マラリア患者の少ない地域ですが、20年以上リテタ病院に勤務しているスタッフがモバイルクニックの報告書を読んで、マラリア患者の多さにとても驚いています。
今後の活動方針
このようにルアノ地区はこれまでニグレクトされてきた所で、必要な医療サービスを受けてこなかったこともあり、住民の健康や衛生状態に関する認識が低く、これからCHWを通しての健康教育を充実させていかなくてはいけないと痛感しています。
月に2回の診療ではあるが、継続させ、郡保健局への報告書提出などを通して、ルアノ地区の状況を理解してもらい、将来的にはヘルスポスト建設、医療スタッフの常駐の方向にもっていきたいと考えています。
本年6月からは、カナカンタパ地区からの強い要請があり、地区のヘルスセンタ-が正式に開くまでとの約束で、月1回の巡回診療を実施しています。