巡回診療に参加して(小児科医 峠千晶先生)

2018年7-8月の2週間、小児科医として巡回診療に同行させていただきました。
7月25日のルアノへの巡回では、朝6時にドライバーさんと事務所で待ち合わせて、医療道具をいっぱいに積み込んだ車で出発し、道中でメンバーをどんどん拾っていきました。Clinical officer(準医師)のムレタさん、助産師さん、薬剤師さん、皆ザンビア人の方です。計5人のメンバーで目的地のルアノに到着したのは11時頃で、そこから車の荷物を下ろしてシンプルな診療所が出来上がり、約70人の外来患者さんの診察が始まりました。70人の患者のうち、高齢の方はほんの数人ほどで、残りは小児と成人が半々くらいであったように思います。多いと感じた主訴は咳、腰痛、歯痛でした。驚いたのは、発熱の有無や主訴に関わらず、受付後に全員がマラリアの迅速検査を受け、結果をカルテに記載された状態で診察ブースに入ってくることです。その日にマラリアが陽性となった患者は3人ほどでしたが、流行期には全患者200人のうち、かなりの割合をマラリア罹患者が占めると伺いました。
日本の総合病院で勤務している私は、診察道具が聴診器、ペンライト、舌圧子、打鍵器のみで、血液や画像の検査も行えない限られた環境で、患者に診断を下すことにとても苦労しました。しかし準医師のムレタさんにアドバイスを求めると、視診、聴診、打診、触診を丹念に行って的確な診断に迫られていて、その優れた臨床能力に感銘を受けました。診療が終わったのは16時で、その後片付けの後でチームの皆で遅い昼食を摂りました。必死に働いた後、青空の下で食べたザンビア料理は格別に美味しかったです。17時にルアノを出発し、事務所に到着して解散した時には22時を回っていました。
翌週の8月1日にサンダラに行った際はさらに道が険しく6時間ほどのドライブであったので、私は運悪く車に酔ってしまいました。嘔気と戦いながら約60人の患者さんを必死の思いで診療しました。さらに帰り道にはタイヤがパンクしてしまい、舗装されておらず、もちろん街灯も何もない道で応援待機と修理のためかなりの時間を取られ、事務所に戻った時には日付が変わっていました。改めて巡回診療の過酷さを痛感した1日でありました。
巡回診療がない日は事務所の一室で寝泊まりさせていただいたため、メイドさんやドライバーさんなど、事務所スタッフのザンビア人の方々とほとんどの時間を過ごしました。メイドさんにはとても可愛がっていただき、最終日の食事は彼女と一緒にザンビア料理を作りました。
この度は山元先生がザンビアにご不在の時期にお邪魔させてもらいましたが、たくさんのことを取り計らっていただいたお陰で、大変充実した時間を過ごすことができました。本当にありがとうございました。また現地で私をサポートをしてくださった全ての皆様に、この場を借りて心より感謝を申し上げたいと思います。現地での大変な巡回診療をチームの一員として経験させていただいき、山元先生の計り知れない努力とまっすぐな志を感じ、目頭が熱くなることが度々ありました。この度はこのような貴重な経験をさせていただき本当にありがとうございました。峠千晶

峠先生