ORMZ活動見学のお礼 (川本 歩様)

ORMZの活動、巡回診療に参加された医学生からの報告です。
山元香代子先生とのやり取りをお示しします。
少し長いですが、お読み下さい。

山元先生
お世話になっております、ハンガリー国立セゲド大学医学部5年の川本歩と申します。
この度はORMZ活動見学を快諾していただき誠にありがとうございました。恐縮ですが私の気づきを3点ほど共有させていただきます。
1.僻地医療に携わる覚悟
今まで私はジンバのミッションホスピタル、タンザニアのモシにある3次病院、そしてルサカのUTHと3つの病院で研修をしてきました。アジアではジャパンハートを通じてミャンマーの病院を見学した事があります。しかしORMZは他の組織と全く異なる環境で活動をされているという事に気づきました。それはサービスが行き渡っていない人達に医療を届けるために片道5~6時間、数カ所の川を渡りながら巡回医療をするなど様々な困難があるからです。
私が山元先生の活動を真似しろと言われてもやっていける自信は今のところございません。さらに、ムレタさんを始め、現地の医療スタッフを巻き込んで活動を続けている山元先生には頭があがりません。診療するために必要なカルテ(ノート)、薬だけではなく椅子、机も全て持参され本当の0から医療を届ける活動は誰かがやらないといけないと分かっていながら中々自分が一歩を踏み出す勇気、覚悟が無いことに気づきました。今回の見学を通じて、アフリカで医療活動をしたいと高校生から考えていた自分に改めてどのような活動をしたいのか自問自答する機会をいただきました。
2.診察のスキル
今回はムレタさんとプリスカさんのお二人が診察をしていました。主訴を聞き、身体検査をし、薬を処方するという流れですがマラリア陽性患者にはマラリアの薬を処方すれば良いかと思います。しかし、マラリア陰性患者の主訴に対して重篤な疾患を見逃してはいないだろうかと少し不安に思いました。例えば胸痛を訴える患者が多かったのですが心疾患を疑うとなると心電図やエコーがどうしても必要になるかと思います。しかし、僻地医療でそこまでの機材を用意するのは難しいのでいかに聴診等で見極める事が出来るかが大事になると考えます。そうすると私が日本でトレーニングをすると機材に頼ってしまい、診察のスキルが身につかないのではないかと少し懸念した次第です。
3.多い主訴の根本的な原因解明
胸痛や腹痛、咳が主訴として多いと感じました。しかし胸痛といっても場所や放射痛、咳も痰の有無など様々な種類が考えられ、それにより原因も異なると思います。僻地医療の目的によるかもしれませんし、私が唱えているのはただの理想論かもしれませんが痛みや咳の症状を診察の時にもう少し分析し、初診の場合は症状を抑える治療で良いかもしれませんが何度も同じ症状を訴える場合は原因解明に努め、予防できる事があればそれを見つける事も患者の為になる事なのではと考えました。
改めまして、実際にお会いしたことのない私に活動見学の許可をいただきありがとうございました。山元先生の活動は他の日本人の医師が行っていない究極の僻地医療だと考えます。是非ご自愛いただき、これからも安全に活動を継続する事が出来るよう願っております。また、私が将来医師としてアフリカに戻ってくる際に助言を仰ぐ事があるかとございますがその際は何卒よろしくお願い申し上げます。
                    ハンガリー国立セゲド大学医学部 川本歩
P.S. 写真の二枚目は住民の方がシャワーを浴びる際に発見した小さいヘビのような生き物です。少しびっくりしましたが興味深いので共有させていただきます。

川本さま
ご丁寧なメールありがとうございます。返事が遅くなりすみません。
貴重なコメントありがとうございます。ムレタさんは自分の力量を分かっておられる準医師です。自分が診ていて、症状が改善しない症例は、緊急性があれば郡・州病院に紹介していますし、私に必ずコンサルトしてきます。2011年から診療開始し、この間に明らかに狭心症の疑われる患者さんがおられましたが、本人が大きな病院に行くことを拒否され、ニフェジピンの徐放剤で経過をみています。また、一番近い郡病院には心電図はありません。
十分な器材もなく診療しているので、何かおかしいと感じた時にはしっかり問診・診察をするように心がけていますし、対応できない時には紹介状を書いていますが、紹介先に行く交通費もないことがほとんどです。プロジェクトで、そのお金を渡して何とか診察を受けに行くように勧めていますし、緊急性がある場合はプロジェクトの車で搬送することもあります。
いろいろなご意見ありがとうございました。これからも真摯に診療していきたいと思います。
ありがとうございました。
山元香代子

山元先生
お忙しい中、私の感想一つ一つにコメントをいただき誠にありがとうございます。
ルアノ地区での医療活動を見学すると村からヘルスポストまで20-30kmある地域などがどうも近くに感じるような気がします。さらに、雨季になると川が氾濫し乾季より活動が困難になる現状や、政府が居住を認めていない地区にも関わらず移住のサポートも一切ないなど現場と政策がいかに乖離しているかが顕著に見られていると感じました。
拙い文章で恐縮ですが掲載いただいて大丈夫です。
よろしくお願い申し上げます。   川本歩

川本医学生写真

川本医学生写真2