ザンビア、大丈夫か!(櫻井睦子様からの報告)

仕事から帰ると今日もまた停電だった。予想はしていたとはいえ、どっと疲れを感じる。
しかも今日は(今日も?) 水も出ない。「勘弁してくれー!!!」
これは先週後半・・・ほぼ毎日の・・・私の心の叫びであった。

ザンビアは現在いままでにない危機に瀕しているように感じられる。

6月から始まったLoad Sheddingと呼ばれる全国的計画停電。一日8時間、時には2回に分けて計14時間も停電する。例えば0時~6時と14時~22時といった具合だ。
冷蔵庫内の食品を守るために、保冷剤代わりにペットボトルに氷を作り、停電になると何本も冷蔵庫内に配置する。冷凍庫には余分に肉を買って入れこれも保冷剤代わりとする。電気が戻ったら溶けたペットボトルを冷凍庫に戻し、次の出動に備えるというわけだ。
また怖いのは電気が戻った時の高圧電流だ。これでパソコンやテレビなどが壊れることがあるので、停電したらコンセントを抜いたり電圧を一定にする特殊なプラグをつけたりして高圧電流の被害を防がなければならない。
計画停電とはいっても、どこの地区が何時から何時までと事前にきちんと知らされるわけではないので、いつ炊飯器のスイッチを入れたら途中で停電にならずにちゃんとご飯が炊けるか思案するのも一苦労。本当に停電に振り回されるストレスだらけの生活である。
電力不足の原因は昨シーズンの雨季の降雨量が少なくてダムの水位が低く、水力発電量が足りないからと言われているが、ダムに穴が開いているからだとか、発電所のタービンが壊れているからだとか、電気が足りないのに周辺諸国に電気を売っているからだとか、いろんな説があって、何が真実なのかわからない。
以前から停電が無かったわけではないが、こんなに長期にわたって続くのは私の知る限り、この20年来なかったことだ。

都市部ではお風呂の湯を沸かす温水器も料理を作るクッカーも電気が頼りだ。なので、この計画停電が始まって人々はプロパンガスを買いに走ったり、低所得者層や地方では今でもよく使われている木炭での調理に切り替えたりした。商店や宿泊施設、また一般の住宅もお金に余裕があれば発電機を購入し、何とかこの危機を乗り越えようとしている。
しかし停電の影響は大きく、工場を中心に中小企業が倒産したり従業員を減らしたりして失業者が増加し、治安が悪くなっている。停電の夜に新人泥棒が活発に稼業に精を出しているわけだ。

こんな事件もあった。大統領が観戦しているサッカーの国際試合中に2度も停電したのである。試合開始8分後に11分間の停電が発生した時は、観客はスタジアムの暗闇の中「ZESCO! ZESCO! (ザンビア電力供給会社)」と叫び、試合再開後数分でまた停電した時は大統領に大ブーイングを送ったそうである。
大統領官邸や大学付属の大病院は計画停電からはずされているので、大統領はスタジアムで初めて計画停電を体験したのかもしれない。(ZESCOによるとこのスタジアムの停電は計画停電でなく担当者のミスによるものだそうで、後日TVや新聞には大統領に対するお詫びの広告がでかでかと掲載されていた)
ちなみに私の住んでいるところは、時々予定より早く電気が戻ることがあるのだが、隣人によると、この地区に当の電力会社のお偉いさんが住んでいるからだということである。

危機を感じさせるのは停電だけではない。ザンビアの通貨クワチャは9月に対ドルで40%も下落した。物価は軒並み上昇。あまりに変動が激しいのでクワチャでなく米ドルで価格表示をする店も現れた。
背景には中国経済低迷がある。ザンビアの主要輸出産品である銅の中国向け輸出が激減、世界的に銅の価格は急落し、鉱山が閉鎖に追い込まれたり、従業員が解雇されたりしている。外貨が不足し、物価は高騰している。
長年政情が安定していることが評価され、日本をはじめ各国からの援助が多く入り、銅の価格上昇で近年はプチバブルと言ってもいいような建設ラッシュを経験したザンビアだが、この電力不足と経済危機の異常事態をどう乗り越えるのだろうか。
計画通りに物事が進まずいつもハラハラドキドキさせられるが、最後にはなんとかなるのがアフリカの常である。この危機もアフリカ風になんとかなるさと信じたいのだが・・・。

今シーズン初めての雨が降った日に―
櫻井睦子