ザンビア2回目の訪問

10月6日から21日にかけて、モバイルクリニックを体験させていただくために、ザンビアまで向かいました。福岡空港から香港、ヨハネスバーグで飛行機を乗り継いで、二日かけてザンビアの首都ルサカに到着しました。私は、およそ6年前に、ザンビアを訪れていて、今回が2回目の訪問になります。以前と比較して、首都ルサカは、自動車の交通量がさらに増えていて、新しいショッピングモール、ビルディング、や道路などの建築ラッシュでした。その多くは、中国資本であり、人々は活気にあふれていました。一方で、以前と変わらずごみの問題は深刻で、都市部でもこの時期には珍しくコレラが発生していました。貧富の格差も深刻です。高級車を乗り回し、先進国と変わらない食事を食べている富裕層と、生きたニワトリを購入して調理し、上下水道が届いていない中で生活している貧困層、その格差は明らかでした。全ての道路がコンクリートに覆われていて、ほとんど道路脇にゴミもほとんど落ちていないし、貧富の差も小さく、お金持ちもそうでない人も同じような洋服を着て、同じような食事をとることができる日本と比較して、多くの課題を抱えていることもわかりました。
今回は、山元先生を中心にモバイルクリニックを継続して行っている三地区のうち、ルアノ地区とニャンカンガ地区を訪問することができました。両地区には、電気、水道はなく、エネルギー源は木炭になります。水は、一般的には遠くの川などから歩いて汲んできて利用することになりますが、これらの地区ではすでに18本の井戸が掘られていて、安全な水を近くで利用できるようになっています。事務所からランドクルーザー2台で薬や医師、助産師など必要な物品と人を乗せて、それぞれ168㎞、173㎞移動します。朝6時に出発し、到着するのは、10時半を過ぎます。その道のりの6割以上は舗装されていないでこぼこのダートロードになります。宮崎の田舎育ちで体力が自慢である私でさえ、長時間の悪路の移動は、とても疲れました。山元先生にお聞きすると、ルアノ地区はその奥地で金が採掘されるようになったために、大きな岩が除去されて、これでも道路はかなり改善されているということでした。想像をはるかに超えた道のりを毎週訪問し、診療だけでなくて、その準備から診療後のまとめまで実践していることに、あらためてその努力に感動しました。
さて、肝心の診療についてお話します。今回は、気候も比較的よくて、ザンビアの祭日による日程変更もあったことから、両者それぞれ60人前後の患者数でした。煉瓦作りの診療施設の中で、その一部の診察をさせていただきました。ご高齢者はほとんどいませんので、主に比較的若い患者が対象になりますが、医療の本質は、ザンビアでも日本でも基本は変わらないことが実感できました。英語を使って、現地の言葉を話せる通訳を介して、コミュニケーションを行います。主訴を聞いて、現病歴、既往歴、生活歴などを確認し、必要な身体診察を行うことで、診断を下すことができます。お薬は、首都ルサカの薬局から多くの薬剤を購入していて、都市部と変わらない医薬品を無償で処方します。月に1回になりますが、これだけの医療を月に1,2回受けることができる現地の住民はとても幸せです。診療後の食事は現地の方が用意してくれますが、不思議とおいしく感じました(写真)。
帰り道では、一台のランドクルーザーからオイル漏れがあり、山奥で火を焚いて3時間ほど待つことになりました。電話も通じないこれまで経験したことのない山奥で取り残されたときには、ランドクルーザー2台で毎回移動することによる安全性を実感しました。日本では考えられないほど車を酷使しますので、新しい車、しかも世界一耐久性の高い新しいランドクルーザーをなんとかもう一度確保できれば、とつよく感じました。
山元先生を中心にザンビアのへき地医療を実践しているNGOスタッフは、とても大事な仕事をしていることに誇りを持っていました。2週間足らずの滞在でしたが、日本に帰るときには、スタッフみなさんとお別れすることがとても寂しくなりました。日本でもザンビアでも、世界中どこにいても、誇り高い仕事をしていくことの重要性と難しさを感じた2週間の研修になりました。今後は、こういった仕事に興味のある若手への研修の機会を

宮崎大学医学部地域医療・総合診療医学講座 松田俊太郎

写真は、診療後の食事風景、少し石が整備された道路、みんなに使われている井戸、山元先生の診療風景です。

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